2011年2月21日月曜日

トーキョーワンダーサイト

トーキョーワンダーサイトというところで「アンサンブル・モデルンのアカデミー」という8日間のワークショップを受けてきました。

8日間、現代曲のレッスン、レクチャー、大人数でのパフォーマンスなどをしてきました。20日に成果発表会なるものがあり、非常に充実して家庭をほっぽり出した一週間でした。

話はいつも急に始まって私はそこに飛び込んでいきます。
楽団の先輩で、大学時代の先生から「こんな催しがあるよ」というお知らせを頂いてすぐに、課題曲について笙の先輩に尋ねたところ「すんごい難しい」ことと「FとB♭がついてる」ことを知り、アカデミー受講について先生にも尋ねたところ「とてもいい機会だと思います」と、仰ってくださったので、ここ一年以上頭をもたげていたモダンピッチの笙を買うことになりました。

お金ない、奨学金の返還も滞ってる、という中で、震えるような気持ちで楽器屋さんにGo。質のよい楽器が欲しかったら職人さんに直接お願いするルートでの購入が望ましいのですが、こういう時に頼りになるのが楽器屋さん。古典ピッチは基準のaが430Hzなのですが、それを442Hzにしてもらい、古典管には音のついていない管2本にB♭とFを入れてもらうというカスタマイズをお願いして(それから更に、安い価格帯なのにも関わらず楽器のあれこれに注文をつけ)、とにかく2月13日までには必ず間に合わせてくれると言ってくれました。

王子にある武蔵野楽器さんありがとうございます!!!

楽器は2月初めに上がってきました。全然慣れない「也」と「毛」の音に指が慣れるよう、プラ管と呼ばれる練習用の管をお借りしていたので、1月後半はそれで練習、注文した楽器が上がってきたら、それで練習しました。

ワークショップが始まってから、怒濤の8日間、東京郊外に住んでいる私は9時半のレッスンに間に合うためには家を7時に出なければならなく、そして19時半からのレクチャーに出ると帰宅は夜11時〜12時。家のことと娘のことを母と夫にお願いして、とにかくできる限りのことをしました。

今の環境の中でできる最大限の努力。

課題曲、とにかく流れに乗ることができました。ヴァイオリンとのDuo作品だったため、ワークショップの参加可否がわかる前からVn.の方に迷惑をかけないかとても心配でした。ワークの始め、自己紹介の時点でDuoの三瀬さんを確認。穏やかそうな人だ、大丈夫そうだ、と心を落ち着かせました。本来2楽章から成る《月の変容》という曲。初演は宮田まゆみ先生、録音も出ています。

いつも練習する通り、録音は聴かずに譜面を追っていました。アンサンブル・モデルンのメンバーからのレッスンが3回。いつも言われるのは和音を必ず同じタイミングで出せ、ということ。それが笙という楽器にはとても難しい、ということを言いたかったのだけれども、英語の壁とその他諸々のなにかわからないものに敗退。4回目のレッスン、作曲者である一柳慧先生によるレッスン。できなさすぎる笙にも関わらず、「それも面白いんじゃない」と評してくださった。しなやかすぎる応対。

今回のワークで、日本の楽器をメインに持って来たのは私一人、プログラムのコンセプトは「東洋×西洋の新しい伝統へ向けて」というもの。この曲はそういった意味でとても大切なものであったようです。モデルンメンバーの先生方は1楽章のみで、と仰っていたようですが、一柳先生は2楽章もと考えていらしたようです。成果発表会2日前までは揺れていたのでどちらも練習。前日に見てもらってやっぱり1楽章だけでいくことになりました。

2楽章のとても難しい部分、三つの和音から合成される、高音域の倍音で記譜されているのとは異なる音が鳴り、それがメロディーのように聴こえることを、私は練習する中で知っていました。けれども、速いパッセージのその和音の連なりでは指がついてかなくて、レッスンの中でそれをすることはできませんでした。この曲が素晴しい曲だということを私は知っています。そしてワークの間、家で聴いた、先生による録音(某サイトで検索)を聴いてショックを受けました。

私は今まで先生のリサイタルには幾度も行ったことがあるのに、何を聴いていたのだろう。

それからは夜9時過ぎまでワークショップの合間の時間に場所をお借りして練習。
大人数でのパフォーマンスにもすべて参加して、一つの五線譜上に出来上がった曲を発表して、おそらく、時間軸と一緒に演奏はよくなっていったと思っています。もちろん、まだまだ力が足りなくて、問題なんて山のようにあるのですが、今できる限りの最大を。

受講仲間の一人から、「昨日(のゲネプロ)からのこの進歩は何なんだ」と驚いて言ってもらえたことを嬉しく思いました。

ゲネプロの後にホールを巡る回廊のようになった廊下で楽器を温めていたところを通りかかった一柳先生が、「できるようになるよ」と、真直ぐに力強く仰ってくださった一言がきっと、一日での伸びを生み出してくれたのだと思います。

ひとまず、娘が学校から帰宅。ちょっとお母さんに戻ります。